ビッグヘルスインフォメーション

呆れたことに、その何かというのは、「味の素」なんです。 今聞けば、ほとんどの人は笑います。おかしいと思います。でも、今、骨租髭症で 牛乳を無理して下痢しながら飲んでいる人だって、同じようなことをしているんです。

私だって、もし『頭脳』が出た当時にこれを読んでいたら、今のような知識がある ゎけではありませんから、的確に判断するのはむずかしかったでしょうね。それほど、 健康についての情報というのは影響力が強いんです。

ただ、味の素をなめて頭がよくなるというので、本当に子供になめさせてしまった 当時のお母さんは、今で言えば『チョコレート健康法』を買うような人だったろうな とは思います。

それはともかく、この本がベストセラーになつて、米食低能論が広まったわけです が、この影響は今でも根強いですね。今では、さすがにバカになると思っている人は いませんが、ただ、米をたくさん食べることはよくないというイメージが植えつけら れました。

粗食のすすめ

昭和三六年に、「一日一回フライパン運動」が実施されました。 この運動の意味がわかりますか? 別名、「抽のオリンピック」と言います。 フライパンを使って、抽をたくさんとろうという意味だったんですね。抽をたくさ んとる国は豊かな国で、抽の摂取量が少ない国は貧しいんだという考え方です。この 運動が、保健所などを通して推進されました。

それから、昭和三八年に、「タンパク質が足りないよ」というコマーシャルが大流 行したわけです。たしかクレージー・キャッツの谷啓さんが、「タンパク質が足りな いよ」と言うコマーシャルだったと思います。

また、「牛乳や卵や肉は完全栄養食品」というすごい言葉もありました。 完全栄養食品というのは、他には何も食べなくても、それだけで生きられる食品と いう意味ですね。卵だけで毎日過ごせるのかと考えたらおかしいわけですが、そうい う言葉まで出たほど、肉、卵、牛乳をたくさんとることがいいんだと信じられたわけ です。

「タンパク質信仰」が決定的になつたのが東京オリンピックですね。 昭和三九年、オリンピックをテレビで見ていた当時の人たちは、おにぎりと味噌汁 を食べていて体の小さい日本人は、肉などをたくさん食べる外国人にかなわないと思 ったんです。柔道でも負けてしまうし、走っても遅いし、飛ぶのもダメだと。唯一頑 張っていたのがプロレスの力道山ぐらいで、あとはことごとく外国人に負けてしまう と思ってしまったんですね。

オリンピックで負けるのが悪いかどうかは別問題として、タンパク質をとらないと

体が大きくて強くならないと思い込んだのです。 「わかめは髪にいい」「レバーは貧血に効く」……こんな錯覚を信じるな

錯覚にご用心

 こうした歴史の中でつくられた常識のせいで、私たちは、食生活に関する三つの錯 覚を植えつけられてしまったんです。  その錯覚を取り去らなければ、食生活の本を謹めば読むほど、人の話を開けば開く ほどわからなくなってしまいます。  そこで、三つの錯覚とは何かについてお話しします。 一つ目が、「肉を食べて筋肉もりもり」という錯覚です。  たとえば、言いにくいことなんですが、私の患者さんの中にユニークな人がいまし た。その人は、髪が薄くて困っていたらしいんですが、一生懸命何かを食べていたわ けです。